ヒーローの仮面を外すとき ― 本当の自分で生きるための心理学
ヒーローとして生きてきた人は、自分では気づかないまま、ずっと誰かの盾になってきました。
家族のため、職場のため、誰かのために動き続けることが“当たり前”になり、気づけば自分の気持ちや限界は後回し。
でも、本当はもう一度立ち止まり、自分の役割を選び直していいのです。
このブログは、そんなあなたが「ヒーローをやめる」ための小さなガイドです。
1.一人で全部背負い込んでいませんか
役割、タスク、責任。
ありとあらゆるものを一人で背負い込み抱え込んでしまう人は少なくないです。
特にケアラーに多い。
「自分しかやる人がいないから」
というのも大きな理由です。実際、家族の中、夫婦の間だけでどうにかしなければいけないことは多いです。病気ではない側(=ケアラー)が一人で全部抱え込まざるを得なくなる。
そうした状況から「仕方なく」というケース以外に、自分が全て背負い込むことが「当たり前」「いつもそうしてきたから」という方もいます。
なぜ、そうしてきたのでしょう。
それは、自分が全て背負い込み、しりぬぐいをし、先回りして手を打ち、困った誰かを救済し続けるポジションにいたからです。
それはまるで映画に出てくるヒーローのように、全部自分が解決して家族や仲間内の問題を解決してきた。それが自分の役割だから。
そうすることで自分に価値を見出していたのではないでしょうか。
更に言えば、自分が全部背負い込むことが危機回避の唯一の手段だったのです。
この場合の危機とは、家族の崩壊や、仲間関係の崩壊です。
自分が全ての防波堤になって来た。
そういう人がもしケアラーになったら。
誰かに頼る、という視点そのものが存在しませんよね。
2.それがあなたの価値だった
このように、問題解決や、問題が起きそうになったときに、そうならないためのワクチンみたいに、あなたはずっと駆けずり回ってきました。
恐らくみんなから感謝されたことでしょう。
「いてくれてよかった」
「あなたのお蔭」
「いつもありがとう」
褒められるほどにその役割を降りることが出来なくなります。
ただ、人は慣れていきます。あなたが常に皆を守って盾の役割を果たし続けると、周囲は「この人はそういう人だ」と認識します。あなたが自覚しているだけでなく、周囲もそれが当たり前になっていく。
当たり前とは、特別ではないこと。そうすると以前は言われていた賞賛や感謝の回数や度合いが下がっていきます。
そうすると、焦ってしまいます。同じことをしているはずなのに、前ほど感謝されない。
感謝されないということは、価値が目減りしているのだ。
このままいったら、自分はここにいる価値がなくなってしまう、必要とされなくなってしまう。
そうなりたくない。だからもっともっと頑張らなければ。
そして更に背負い込み・抱え込みの程度が高まっていきます。
最初はヒーローだったあなたが、ヒーローではなくなる自分を受け容れることが出来なくて、その役割にしがみつくようになってしまうのです。
でも本当に、そのヒーロー役は、あなたが望んでいたものでしょうか。
3.ヒーロー役割とは
ここでお話している「ヒーロー」についてご説明します。
「ヒーロー役割」とは、機能不全家族でよく見られる「生き延びるためのサバイバル戦略」です。
家族の中が不安定だったり、誰かが感情的に不安定だったり、大人が本来の役割を果たせない状況が続くと、子どもは無意識のうちに「家族を守るポジション」に入っていきます。
その結果として、
- しっかり者でいること
- 優等生でいること
- 問題を起こさないこと
- 家族の誇りになること
という振る舞いが「当たり前」になっていきます。
でもこれは、性格の問題ではありません。あなたがそうしたかったからでもありません。
家族の混乱を少しでも減らすために、あなたが必要に迫られて身につけた生存スキルなのです。環境があなたをヒーローにしてしまった、と言えるでしょう。
ではここで、あなたの「ヒーロー度」を簡単にチェックしてみたいと思います。
次の10項目について、YES/NOで答えてください。
深く考えず、直感で選んで大丈夫です。
1.人に頼るより自分でやったほうが早いと感じることが多い
2.弱さや失敗を見せるのが怖い
3.頼まれごとを断ると罪悪感がある
4.家族や周囲の問題を「自分が頑張れば何とかなる」と思っていた
5.いつも「しっかり者」「優等生」として振る舞ってきた
6.役に立たない自分には価値がない気がする
7.休むと落ち着かず、何かしていないと不安になる
8.他人の感情や空気を過剰に読み取り、先回りして動いてしまう
9.トラブルや混乱が起きると、自然と自分が仕切ってしまう
10.「助けて」と言うより、抱え込んで限界まで頑張ることが多い
<YESの数でわかるヒーロー度(抱え込み度)>
■YES0〜2:ヒーロー役割は薄め
役割に縛られず、自分のペースで生きる力が育っています。
ただし、ストレスが強い時に一時的にヒーロー化することはあります。
■YES3〜5:ヒーロー傾向がある
普段は落ち着いていても、「責任を背負いすぎる」「頼られすぎる」状況でヒーロー化しやすいタイプ。
境界線を意識するとぐっと楽になります。
■YES6〜8:ヒーロー役割が強い
長い間、周囲の期待や家族の混乱を支えるために頑張ってきた可能性があります。
抱え込みが習慣化しているため、「頼る」「弱さを見せる」練習が大きな転換点になります。
■YES9〜10:「生粋のヒーロー」として生きてきた
あなたは本当に強く、優しく、責任感のある人です。
ただし、その強さは孤独の上に成り立ってきたかもしれません。
これからは、「役割」ではなく「価値観」で生きるステージに移るタイミングです。
4.役割よりも価値観で生きる人生とは
プチ診断、如何でしたでしょうか。
一般的な「ヒーロー」像とは少し違っていたかもしれません。
映画やアニメとは違う、リアルな世界での「ヒーロー」には、舞台裏があります。私たちの普段の生活です。
ヒーロー度が高ければ高くなるほど、舞台裏がなくなってしまいます。舞台裏までヒーローであらねばならないと考えてしまうからです。
ヒーローは、場面・程度・使い方を限定しなければ、自分が潰されていくだけなのです。
しかしヒーロー度が高いほど、ヒーロー役割を手放せません。
なぜならそれが、自分自身の価値で、拠り所だからです。手放すと、自分が今ここにいる意義すら分からなくなってしまいます。家族でいていいのか、友人でい続けていいのか信じられなくなってしまう。
だからどれだけ自分自身が侵食され、疲労やストレス、孤独感、責任の重さや不安を感じていたとしてもしがみつくしかなくなるのです。
……考えただけでしんどい立場です。
では、映画のヒーローは、皆そんな頑張り方をしているでしょうか。
そんなことないですよね。彼らは何かにしがみつくために戦っているわけではありません。
自分が守りたいものを守るために戦っている、その結果、ヒーローになっているだけなのです。
あなたも恐らく、最初から「他に拠り所が無いから」ヒーローになったわけではないのでしょう。
たとえば親の心労を減らすため、両親の仲を保つため、弟妹を守るため、自分が怒られないため・見捨てられないため。
理由があって始めたヒーローだと思います。
なら、重要なのはヒーローでい続けることではないのではないでしょうか。
本来の価値観、大事にしたいものへ立ち戻ることなのです。
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5.ヒーローだったあなたの財産―資源、ストレングス
では、ヒーローとして踏ん張って来た今までは無駄だったのだろうか……。
それは絶対にないです。
無駄であるはずがない。だってとても努力して、我慢して、必死で何かを守り続けて来たはずですから。
ただ、今となってはその役割の担い方が自分に合っていない、というだけなのです。
これまで努力してきた実績は残っています。
それが、あなたの「資源」であり「ストレングス」です。
資源とは、有形無形を問わず、あなたがこれから何かをしたいときに活用できるモノ・コト・ヒトのことです。
たとえば家族の平和を保つためにヒーローを演じ続けてきたとしたら、あなたが守ったその家族が資源です。家族がいてくれるから、これからはあなたは家族を頼っていいし、家族がいるからまた頑張れます。
友人のために辛い役割を肩代わりしてきたとしたら、周囲は確実にあなたを信頼しています。その関係性が資源です。
ストレングスとは、日本語で言えば「強み」「長所」です。ただ、何か特別なことだけを指すわけではありません。
今まで仕事と家のことを両立し続けて来たなら、そうでない人より経験値は確実に高くなっています。いわゆる「マルチタスク」も得意でしょう。
同じような立場になって悩んでいる人がいればアドバイスしてあげられます。
仕事で悩んだ時に、家での役割が息抜きや逃げ場にもなってくれたはずです。
これから新しく「自分の価値観」を拠り所として生きていくことになっても、ヒーロー時代の経験があなたの土台になるはずです。
6.まとめ
ヒーローとして生きてきたあなたは、誰よりも強く、誰よりも優しく、そして誰よりも孤独でした。
家族の混乱を防ぎ、誰かの涙を拭い、問題が起きる前に先回りして動き続ける。
その姿は確かにヒーローでしたが、同時にあなた自身をすり減らす生き方でもありました。
けれど、ヒーロー役割はあなたの本質ではありません。
環境があなたに背負わせたサバイバル戦略であり、あなたの価値そのものではないのです。
そして今、あなたはその役割を続けるかどうかを選び直せる地点に立っています。
ヒーローをやめることは、弱さではありません。
むしろ、自分の人生を取り戻すための最初の一歩です。
これまでの経験はすべてあなたの資源であり、強みであり、これからの人生を支える土台になります。
どうか、役割ではなくあなた自身の価値観を中心に生きてください。
ヒーローでなくても、あなたは十分に価値ある存在です。
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